セレクトショップの編集コンセプト <35歳、自立、モード>

 1969 年パルコの創設者増田通二氏は、ファッションビル池袋パルコを開業する際、<21歳、OL、ファッション>というコンセプトでテナントを編集したという。ファッションビルという世界に類のない商業施設は、日本の消費社会が大きく変貌しようとするその前夜に誕生した。増田氏の慧眼には、脱帽する他ない。

 年齢は、21歳。学校を出てから仕事に就いて間もないOLにファッションを提供するというのである。時は、’69年。ファッションの主流が一握りの層のためのオート・クチュールからもっと広範な層のためのプレタポルテへと転換するまさにその瞬間であった。

 この天才的マーケターのコンセプトをウェブサイト上のセレクトショップに転用させていただけば、弊社の編集コンセプトは、<35歳、自立、モード>となる。

 35歳。男女問わず仕事で一人立ちできるのは、現在35歳前後であろう。それは独立起業だけを意味する訳ではない。会社員であれどんな職業であれ、社会の中で何かしらの役割を果たしていける年齢ということを意味する。

 例えば、最近この35歳前後で時を同じくして複数の女性の映画監督が作品を発表し内外の注目を集めているという。映画という20世紀のメディアにおいて活躍するこうした人々の諸活動を「自立」と呼んでいるのである。ここに「モード」の転換を予感する。

 西欧近代は、イタリアルネサンスにおいて古代ギリシャ、ローマの歴史的遺産との媒介を通した文化運動によって始まった。閉塞状況にある日本の社会には、文化における「再生」への様々な試みが必要であろう。

 ウェブサイトという21世紀型のメディアにおいて実現したいのは、現在35歳前後で自立しつつある人々と「第三のイタリア」というルネサンスの歴史を持つ地域の工房からセレクトしたバッグとの懸橋となることである。

2007年10月1日

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