「オブジェ」・「労働」そして「モード」 企画展「働く女性のBAG達」を訪ねて

 師走の東京。港区にある「女性と仕事の未来館」の企画展「働く女性のBAG達」を訪ねた。バッグデザイナーの稲葉一枝さんによる企画である。

 企画のテーマは、働く女性の傍らにあるバッグにスポットを当てながら、モノから出発しその時代に生き、働いた日本の女性達の過去を振り返りながらその未来を考えようというものである。無論、あくまでそこには働いた女性達の痕跡としてバッグというオブジェがあるのみである。

 心打たれるのは、アジア的特徴として一枚の布で包みモノを持ち運んだ女性達の労働である。アジアの様々な風土、文化の中で、モノを大切に包み込むという心細やかな息使いが聞こえてきそうだ。日本でそれは風呂敷と呼ばれる。風呂敷の様々な包み方の内で「ふろしきBAG」に新鮮な驚きを覚えた。一枚の布からデザインする使用者のしなやかさを、イタリアのデザイナーに見せてやりたいという職業的な誘惑に駆られたことを告白せねばならない。

 最終コーナーの「未来のBAG」は、消化不良の感が否めない。未来は誰にも見通すことができないという性格から無理からぬことである。過去の記憶を現在という時間において紡いでいく以外に未来は切拓けない。バッグも一枚の布も語る言葉は持たない。現在に生きる人々が過去に生きた人々の痕跡としてのオブジェから触発され言葉を紡いでいく他に道はないであろう。

 '68年の革命におけるモードの転換から21世紀の現在。バッグというオブジェを通した使用者の厳しい労働の現場における哀歓から触発されつつ、働き続ける現代女性へ提供するバッグを企画者と同様に捜し求めていきたい。

2007年1月10日

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