モードにおける色彩革命

 「黒の衝撃」と呼ばれる全身黒ずくめの穴あきのコレクションで川久保玲がパリのオートクチュールを震撼させたのは、1981年であった。モードの既存の記号をデザインと色彩においてズタズタに切り裂くファッションデザインにおけるひとつの事件であった。

 このモードにおける色彩革命は、継続している。かつて小学校に入学した頃、男の子は黒いランドセル、女の子は赤。そんなことは、誰が決めたのか。何の決まりもなかったとうのは、今多様な色のランドセルを背負った小学生を街で見かけることで明らかであろう。

 黒と赤という色彩は、性差を示す記号であり、無意識のうちにそれを受け入れてしまい性差を自明のこととした共同の幻想、言い換えれば神話であった。こうした神話は、いずれ滅んでいく運命にある。最近よく問題となる「性同一性障害」とは、性差の解体の後は「障害」ではなくなってしまうであろう。

 それでは、どのようなバッグをコレクションしなければならないのであろうか。それは、バッグを差異の表示のための記号から解き放ち、身体の自由な活動をサポートしてくれるアイテムとして位置付け直すことであろう。同時に豊富な色彩の中から好みの色を選んでいただけるようカラーオーダーを充実させていくことが必要である。地中海世界で熟成されたイタリアの華麗な色使いのバッグをアルティザンのクラフト的生産によって実現させたい。

2017年2月6日

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